安全管理のために、建物で使用されている吹付けアスベストの飛散状況を定期的に確認したい。
改修・解体工事の時だけではなく、建築物の維持管理においても気中濃度測定を実施しております。経年劣化が原因で建物内でアスベストが飛散している事例も確認されていますので、定期的な測定をお勧めします。
事例詳細
状況
テナントビルのオーナー様より、入居されているテナント様の安全管理のために、建物で使用されている吹付けアスベストの飛散状況を定期的に確認したいとのご依頼をいただきました。
作業内容
アスベストの気中濃度測定を実施しました。
具体的には、各テナントにて捕集用ろ紙ホルダーを高さ150cmになるように設置し、吸引ポンプで2時間ろ紙に粉塵を捕集しました。帰社後、捕集したろ紙を位相差顕微鏡にて観察し、総繊維の計数を行いました。
今回の結果は測定箇所全てで定量下限値以下でしたが、今後も定期的に測定を実施していく予定です。
解決のポイント
アスベストの被害について
個人差はありますが、空気中に飛散したアスベストを吸入して数年~数十年経過後に、中皮腫などを発症する可能性があります。
発症した場合の予後は悪く、患者本人、家族、会社にも大きな負担が発生します。
気中濃度測定の必要性
吹付けアスベスト等を使用している建物内のアスベストの飛散状況を把握するため、定期的に気中濃度測定と目視点検を行うことで早期に対策を講じることが可能です。
工事等で直接吹付け材に触れるような作業等に限らず、アスベストが除去されていない建物内で経年劣化によりアスベストが飛散している事例も確認されています。
また石綿を含む保温材、耐火被覆材、断熱材(レベル2)においても、損傷や経年劣化等で石綿が飛散する恐れがある場合、吹付け材(レベル1)と同様の措置(除去、囲い込み、封じ込め)が必要になります。(石綿則第10条)
≪アスベスト含有建材料の分類≫
・レベル1:吹付材(除去時の発塵性が著しく高い)
・レベル2:耐火被覆材、断熱材、保温材(除去時の発塵性が高い)
・レベル3:その他成形板(除去時の発塵性が比較的低い)
※分類ごとにアスベストの発塵性が異なります。
当社ではJIS及びアスベストモニタリングマニュアルに準拠したアスベスト気中濃度測定を行っています。
(測定)
・捕集用ろ紙をホルダーにセットし、高さが150㎝になるように設置する。
・吸引ポンプをホルダーに繋ぎ、吸引流量5.0L/minとし、2時間室内の空気中の粉塵をろ紙に捕集する。
(分析)
・捕集したろ紙を検査室へ持ち帰り、位相差顕微鏡による総繊維の計数を行う
・総繊維数1本/L以上の場合、ろ紙を低温灰化し、無機繊維の計数を行う
お客様へ分析報告書として総繊維数と無機繊維数の結果を提出致します。
≪測定風景≫
目視点検について
気中濃度測定作業と同日に吹付けアスベスト等の劣化具合を目視でも確認します。
目視点検で劣化が見受けられ、気中濃度測定の結果でも無機繊維の飛散が確認された場合、飛散対策措置をする必要がある旨をお客様へ報告します。