建材中には、一般的な分析方法によっては、石綿との判別がつきにくい繊維状物質が含有している場合がある。このような場合において、その建材が労働安全衛生法施行令上「石綿等」に該当しないようなものであるとき、そのような繊維状物質を石綿と判別し、「石綿含有せず」を証明することは可能か?
走査型電子顕微鏡を併用した精度の高い分析(形態観察、構成元素分析)によって、そのような判別ができた事例もある。
事例詳細
状況
ある大手不動産会社様が管理されている大型商業施設についてアスベスト調査の依頼。鉄骨の柱や梁の吹付け材の補修として湿式吹付け材が使用されていた。この湿式吹付け材中に白石綿のようなものが確認されたが、本当にアスベストかどうかをしっかりと確認(分析)して欲しいとのこと。
作業内容
JIS A 1481+走査型電子顕微鏡(形態観察、元素分析)を実施しました。また、アスベストに似た鉱物の標準品との比較も行いました。
解決のポイント
JIS A 1481に規定されている位相差分散顕微鏡とX線回折分析に加えて、走査型電子顕微鏡分析(形態観察、元素分析)を行い、多角的な分析結果から最終的な判断を行っています。
アスベストはもちろん、アスベストに似た鉱物とも比較することが重要です。
湿式吹付け材に確認された繊維状物質は白石綿ではなく、セピオライトでした。
(セピオライトはアスベストではない天然鉱物で、アスベストの代替品として吹付け材などに使用されています)
※セピオライトを白石綿であると誤判定しているケースは少なくありません。
過去に白石綿含有との結果が出た建物について現在維持管理をされているのであれば、建材分析をやり直してみることをご検討ください。